カテゴリ
以前の記事
ブログパーツ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
2012年 06月 01日
今日6月1日は衣替えですね。
前倒しのクールビズのせいで、衣替え?なんのこっちゃ状態の私ですが、女子中高生の半そで姿に初夏を感じます。 さて、今日のお題は藤沢周平の遺作となった「漆の実のみのる国」です。 なにゆえにハンバーグの写真なのか? よく利用するファミレスみたいだがファミレスでないレストランが近所にあります。 ここが故・藤沢周平が毎日のように利用した東京・大泉学園にある「サンロイヤル」です。 その店の名物がこのハンバーグで、デミグラスソースが絶品の優れモノです。 藤沢周平もなんども口にしたことでしょう。 時代小説といえば司馬遼太郎一辺倒だった私ですが、近所に住んでいたご縁もあるので、藤沢周平も読んでみるかと手に取った作品が「漆の実のみのる国」です。 この作品、遺作ではありますが代表作とはいわれません。 藤沢周平といえば市井の人物を主人公にした人情話や武士ものが定番ですが、この作品はそのふたつに属さない歴史小説です。 名君と謳われる上杉鷹山を主人公とした長編となります。 上杉鷹山を主人公にした小説は童門冬ニの「小説 上杉鷹山」が他にもあり、以前に読みました。 この作品と比較すると、「漆の実のみのる国」はあまりおもしろくありません。 本当にあったこと「歴史的事実とされていることを材料に、あるいは下敷きにした小説」だからです。 ドラマチックに盛り上げるところもありませんし、派手なドンパチもなくエンターティメント性に欠けます。 この小説をひとことで表せれば「リストラとうまくゆかない殖産に苦労し続ける米沢藩」です。 作者が亡くなってしまったため、改革にほのかな灯りが見え始めそうな予感がするところで終わりです。 改革が成就し、苦労が報われハッピーエンドとなって欲しい読者にとっては、尻切れトンボという印象はぬぐえません。 しかし、ブックカバーにあるように、鷹山の孤独と哀しみを明澄な筆でえがきだす物語は、いよいよふかく静かな響きをたたえはじめる、ここの部分が腑に落ちると俄然、この小説はおもしろくなります。 いくら俊才を集め、とてつもない努力を行っても改革はままならない。 才能のある者もない者も、命を賭して事にあたるが改革は成就しない。 そのような状況にあっても不屈の精神で50年余の長きに渡って藩を導いた鷹山公。 この孤独と哀しみを透き通るような筆遣いで、物語は淡々と進みます。 バブルに浮かれた世を憂うようにして書かれた小説であると聞きました。 この小説に書かれた米沢藩の姿は、バブルがはじけ長い停滞期に陥った現在の日本の姿と重なります。 緊縮だけでは国も民も疲弊するだけ、殖産を試みても簡単には成功しない。 ヒントがこの小説にあるわけではありません。 苦境にあっても希望を失わない凛々しさのなかに「停滞の美しさ」を発見し感動するのです。 詳細はコチラ!
by mixa_suwa
| 2012-06-01 09:54
| 神楽坂日記
|
ファン申請 |
||