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2013年 12月 27日
伊丹十三といえば映画監督として有名ですが、エッセイストとしても一流でした。
30年ほど前に新聞に掲載された「子供を王子様のように育ててはいけない」というエッセイを今でも覚えています。 おおまかな内容は、 “子供を王子様のように育ててしまうと異常にセルフイメージの高い人間になってしまう。 大人になって世の中に出ると、自分の思い通りにいかないことばかりが起こる。 セルフイメージの高い人間は失敗に対して抵抗力がない。 抵抗力のない人間は反省や努力をせずに失敗を環境のせいにする。 そして自分の人生は失敗だという妄想に取りつかれる。この状態は彼にとって地獄である。 地獄が口を開けて彼を待っているのが見える。”というものでした。 このエッセイを読んで衝撃を受けた私は子どもができたら絶対に甘やかさないぞ、厳しく育てようと決意したのでした。 子どもは授からなかったのですが、人を雇うようになって、このエッセイが理解できるようになりました。 恵まれた環境で育つことは幸せなことですが、子どもを甘やかしすぎると間違った考えを持つようになります。 社会的ステータスの高い職業に就いている親を持ち、裕福な家庭で育った従業員が何人かいました。 彼らは理解のある両親の元、何不自由なくすくすくと育てられました。 お仕着せはいけない、本人の希望通りにやりたいことをやらせることが最高の教育だ、という信念を親は持っていました。 個性を伸ばす、伸び伸びと、叱らない、褒めるが彼らの子育てのキーワードです。 このような環境で育った人間は「根拠のない全能感」を持ってしまいます。 好きなことだけすればいいんだ。嫌なことはしなくても良い。いつも褒められるのが当たり前。なにをしても叱られない。 こんな言葉で表せるような環境です。 俺は才能があるんだ。なんだってできるんだ。他の奴らが評価しないのは、奴らに見る目がないからだ、と自信満々です。 こうした環境で育った結果、自分の好きなことをさせてもらうのが社会なのだ、という勘違いをしてしまいます。 就職すると彼らは戸惑うことになります。 自分がしたいような仕事をさせてもらえない、つまらない仕事を強要させられる、こんなはずはないと。 これは会社がおかしい、こんな仕事を押し付ける上司は能なしであると決めつけます。 会社も学校と同じように、自分の成長を助けるためにある組織であるとの勘違いが根本にあります。 彼らに共通することは、今起こっていることは、自分に責任があるのではなく、自分以外の誰かが悪いのだと責任転嫁をすることです。 そして、反省するのではなく、一生懸命に恨む誰かを探します。 あいつのせいで俺はおもしろくないんだ、こんな暮らしをしているのは会社のせいだ、と。 我慢、忍耐という言葉とは縁遠い彼らは、転職を繰り返すようになります。 転職も年齢を重ねるに従って難しくなります。なぜなら転職に有利なキャリアを重ねることなく、いつも歳だけとった新人状態のままだからです。 ところがラッキーなことに、彼らは甲斐性ある親を持っていますから、中年になっても親の庇護が受けられます。 しかし、それも時間の問題。親も老境に入り、鬼籍に入るようになると…。 伊丹十三のエッセイにある、地獄が口を開けて待っているのでしょう。 残酷なお話しです。おしまい。
by mixa_suwa
| 2013-12-27 09:30
| 神楽坂日記
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