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2015年 03月 27日
今から20年程昔、インターネット黎明期のことです。
当時の私の上司が、インターネットを利用したグラフィックデザインの受発注の仕組みを考えました。 まだDTPも端緒についた頃で、印刷物を作成する工程はほぼフルアナログの時代です。 印刷物を制作する前工程は版下デザイン・写植・製版と分かれていました。 その頃は工程ごとに担当者は異なり、多くの場合、彼らは別々の企業に所属していました。 仕事の進捗は、中間製作物を作成して会って打ち合わせを繰り返すというスタイルです。 私の上司は、この頻繁で複雑なアナログのやり取りをデジタルデータのやり取りに変えることで、時間とコストを短縮できると考えたのでした。 我がボスは100を超える特許を取得して“特許王”の異名をとる超優秀な開発者でした。 アメリカで次世代の印刷産業のビジネスを探し、MITメディアラボの創設者ニコラス・ネグロポンテ氏と交友を持つというすごい人です。 コミュニケーション手段はもっぱら電話か会って話すという時代に、サンのワークステーション(OSはUNIX)を使ってアメリカとメールでやり取りするという先進的な働き方をしていました。 この構想も考えただけでなく、通産省、現在の経産省の補助金をいただいて開発に取り掛かります。 名付けて「バーチャルカンパニー」構想です。 ある仕事をさまざまな会社や個人事業主が各々の分野を担当して行い、あたかも一つの会社で行っているように見えるからです。 この仕組みによって、制作の工程で発生するボトルネックを解消できるとも考えました。 1年間かけて部下に仕様書を書かせ、協力企業にプログラミングを行わせ、サーバーを構築し一応カタチらしきものは完成しました。 しかし、できあがったシステムは実際に運用されることはありませんでした。 この「バーチャルカンパニー」が実用化されなかった理由は簡単です。 あまりに先進的すぎて、時代が追い付いていなかったということです。 当時のネット環境は今から考えると、まったくお粗末でテキストデータを送るくらいがせいぜい、A4サイズの画像を送るのに1時間以上もかかるは、通信コストも今では考えられないくらいに高いものでした。 デザインのやり取りを直接会わずして行う、という仕事の流れはほとんど理解されませんでした。 印刷物の見本となる校正をどうするのか?とか実際に運用を検討してみると、当時の一般的な仕事の流れ とは大きく違うワークフローでは受け入れられることは難しいことも分かりました。 昨年、東証マザーズにクラウドワークスという会社が上場しました。 行っていることは、20年前の我がボスが考えたことにほとんど同じです。 フリーランスと企業をマッチングする仕事依頼サイト、と説明されています。 20年を経てネット環境が整い、人々の考え方もネット時代に適応できるようになったのでしょう。 ネットがもたらす豊かな社会の実現のひとつの解になっていると思います。 このことは、ひとつのことを教えてくれます。 ビジネスを成功させるのは、アイデアよりもタイミングということです。 いくら素晴らしいアイデアであっても、そのアイデアを活かせられるような環境が整っていなければビジネスとして成立しません。 母校の偉大なる先輩、チキンラーメンとカップヌードルの開発者・安藤百福翁は言いました。 「どんなに優れた思いつきでも、時代が求めていなければ、人の役に立つことはできない」 納得です。
by mixa_suwa
| 2015-03-27 09:30
| 神楽坂日記
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