カテゴリ
以前の記事
ブログパーツ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
2015年 12月 14日
10年程前のお話しです。
懇意の写真家と雑談をしていました。 彼はストックフォト業者に憤慨していました。 「フォトエージェンシーほどあくどい商売はない。写真家から預かった写真を貸し出す儲けが、お客に販売するお金の半分とは納得いかない。 普通、街のお店が仕入れて販売すれば儲けは売価のせいぜい10%だ。ガソリンなんかだったら1ℓ100円なら儲けは3,4円だよ。 品物の保管に場所取るわけでもないし、配送の手間も大したことない。なんで半分も利益を取らなければいけないんだ!」 当時、エージェンシーとカメラマンの取り分はフィフティーフィフティーが相場でした。今の言い方ならコミッション率は50%です。 クローズドな時代だったので、おおまかな相場でさえも知りようがありませんでした。 私が認識していたのも、普通は50%で、力のある作家さん(このような呼び方が標準でした)なら60%のコミッション、というものです。 街の商売では、彼の認識通りでした。販売金額から仕入れ金額を引いた儲けはせいぜい20%くらいでした。 彼は製造者から商品を仕入れて販売をした経験がありましたから、その考えは経験から照らしてみれば妥当です。 私は口には出しませんが、 「あなたはそうは言うが、小説家の印税は10%が相場だ。写真も小説、文章と同じ著作物だとするなら、50%ものコミッションが入るのは写真家にとって有利なのではないか。」と思いました。 小説は原稿がそのまま商品になるわけではありません。印刷、製本、配本などの手間がかかるから同列には扱えないでしょうが、それでも小説家からすれば、売上の半分が作家に入るなら、こんなおいしい商売はないと思うでしょう。 もちろん、私と彼のどちらかが正しいというものではなく、考え方が違うというものです。 その後、海外のエージェンシーとコミッションの交渉をして驚きました。提示されたコミッション率は日本のエージェンシーの半分以下です。 嫌なら扱わない、というとても高飛車な態度です。 なるほど海外での交渉事は力関係で決まる、と教えられていたけど、その通りだと納得しました。 日本のように相手の立場を慮(おもんばか)るということはありません。 しかし、海外のエージェンシーには彼らの理屈があります。 写真を販売するには莫大なプロモーション費用、ITへの投資、多くの従業員コストがかかる。写真家へのコミッションが20%を超えれば経営が成り立たない。 自分たちが生き残るためには低いコミッション率は当然だというわけです。 時代が下って現在、コミッション率は誰でも知ることができるようになりました。 コミッション率を自社サイトで公表しているところも少なくありません。 15%~70%というかなり広い幅があります。多くの方は左側に近いところに位置しているようです。 懇意の写真家は呆れているでしょうね。 「3万円で販売されてカメラマンの手取りが半分しかないと怒っていたけど、まだマシだった。 500円で売られて作家の手取りが20%じゃ、実入りはたったの100円。これでどうやって取材費が出るんだよ。」 まあ、関西弁でいうならせんないことです。 キャリアのあるカメラマンなら、とても今のコミッション率と販売価格ではやっていけないと思うでしょう。 そう考え廃業に至った方も大勢します。 まあ、コミッション率ひとつとっても、こんな歴史があるわけです。
by mixa_suwa
| 2015-12-14 09:30
| ストックフォト
|
ファン申請 |
||